東京高等裁判所 昭和33年(ツ)87号 判決
原審が本件競売手続の基本となつた抵当権の有効に存在していたかどうかにつき判断するにつき、認定説示する事実はその引用の証拠を総合してこれを認定できないことはない。尤も原判決が右事実認定の一資料として引用している第一審証人石井満の供述中には、右抵当権設定契約の担保提供者である訴外石井満において右担保提供につき承諾を与えたか否かにつき何等供述するところはないが、それは第一審当時右抵当権の有効無効については当事者間の争点になつていなかつた関係からであろうと思われるのである。しかし右抵当権の有効無効につき最も利害関係の大きい右石井がこの点につき何等否定の供述をしていないことは心証形成の一資料ともなり得るものであつて、この意味において原審は右石井の証言とも右認定の一資料として引用したものと考えられるし、その他に原判決が前示事実認定の証拠として引用している成立に争のない甲第一号証(土地登記簿謄本)、特に印影の成立に争のない甲第三号証(右石井満の担保差入承認諾書)、原審における被上告人(被控訴人)本人尋問の結果を彼此対照して考えれば、右担保提供につき石井満の承諾のあつた事実はこれを推認することができ、他にこれを覆すに足りる何等の証拠も顕れていないのであるから、原判決には虚無の証拠により事実を認定した違法なく、所論は理由がない。
(柳川 坂本 中村)